映画パンフは宇宙だ!

PROJECT

映画パンフは宇宙だ!メンバーが選ぶ2023年ベストパンフは?

◆今井悠也(映画パンフは宇宙だ!主宰)

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー
摘出手術というモチーフをシンプルな装丁に落とし込んでいてお見事。

白鍵と黒鍵の間に
ピアノモチーフ、金銀2色刷りはじめ、さまざま趣向を凝らした総合力。

枯れ葉
カウリスマキといえばこの装丁。表紙は写真を貼った、あえてのストレートさが粋。

福田村事件
持ちごたえ、読みごたえ満点の充実のテキスト。

逆転のトライアングル
さまざまな表紙パターンが楽しい、ラグジュアリーでおしゃれなパンフ。

Pearl パール
さらば、わが愛 覇王別姫 4K

ドミノ

崖上のスパイ

ゴーストワールド

SNS上での映画パンフ文化への注目度が徐々に上がっているような気がします。

◆あずさ(イラスト担当)

aftersun/アフターサン
作品の雰囲気をそっと詰め込んだ一冊で映画の余韻に存分に浸ることができてgood。サイズ感がかわいいのも素敵。

窓ぎわのトットちゃん
特殊なギミックはなくベーシックなパンフレットですが、盛り沢山な内容でかなり読み応えありました!

◆小島ともみ(アリ・アスター短編解説読本:編集長・PATUFan×Zine vol.04:編集長)

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー
繊細な手技で開けなければ壊れてしまう…「アートな手術」を再現したかのようなギミックの封筒(初回限定のみ)、開けると体内。強烈で格好良い!

ファースト・カウ
見開きにして裏から見ると、牛“イーヴィー”が物静かに語りかけてくる!動物を据えたパンフでここまで愛しさ溢れるものは見たことがない。

探偵マーロウ
探偵ものが好きなら狂喜乱舞間違いなし。大きさがまちまちのファイル、手紙と「手がかり」を手にできる楽しさ、コーヒーの染みに興奮。

シック・オブ・マイセルフ
ケースから引き出すとあらわれる薬のシート。自己主張の塊加減が映画ともシンクロする使用で何度も出し入れしてしまう……。

帰れない山
登山スタイルの王道ともいえるチェック柄に山好きならばグッとこないはずがない。映画の余白を埋める、封筒に入ったポストカードに泣かされる。

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
出るたびギミックに驚かされる大島パンフ、まだこんな手が!動く目玉付き初回版を入手できなくても、自分で用意して貼れる親切。渦巻き文字の表紙も楽しく、面陳したい!

ポトフ 美食家と料理人
皮表紙メニュー風の上品な装丁、内容は何よりもまず再現レシピが来る料理推しのぶれなさ!充実のキーワード解説など、グルメ映画系のなかでもピカイチの濃さ。

映画ドラえもん のび太と空の理想郷
子どもはもちろん、大人でもわくわくしてしまう仕掛けがいっぱい。物理的に映画を追体験させる素晴らしい遊び心!

逆転のトライアングル
ラグジュアリーな雰囲気のなかから覗く、人を食ったような諧謔。大人の駆け引き漂い、知的センス溢れる!

スイート・マイホーム
もはや大島さんの十八番と言いたくなる、硬質で金属を思わせる紙遣い。それが不気味に配置された穴から覗くインパクト大な表紙。不穏極まりない本文ページも最高。

通常版、特別版といったものが減った代わりに、初回限定版というのが増えた印象です。

◆しかまる。(PATU テキスト)

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー
初回版にカバーが付いていて、作品を象徴する皮膚を切り開く感覚がパンフに落とし込まれていて素晴らしい。

アンダーカレント
大島依提亜さんならではの、トレーシングペーパーを効果的に使ったデザインが素敵。

BLUE GIANT
実物大のレコード盤サイズで、スリーブもしっかり厚みがあって良かった。飾っておきたくなるパンフ。

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい
作品タイトルを表紙ではなく、ぬいぐるみにつけるタグに印刷するという発想がすごい。

帰れない山
山映画としての本作の素晴らしさがこの一冊に凝縮されている。

イノセンツ
シンプルな装丁だけど、中身の写真の使い方、特殊な色使いで子供たちが持つ不思議な力の雰囲気をしっかり出している。

◆鈴木隆子(PATU Fan × Zine vol.05「タレンタイム」:編集長)

ドキュメント サニーデイ・サービス
ボリューム、内容はもちろんのこと、CDもついていてファンの事を考えてくれすぎている。

SHE SAID/シー・セッド その名を暴け
2パートにわたるプロダクションノート、主人公たちと近しい立場にいた方が執筆するコラム、本作の主人公である記者ミーガンとジョディのインタビューと、作品を観たあとに知りたいことが全て詰まっている。

チョコレートな人々
チョコレートが並ぶ表紙のデザインが可愛い。東海テレビ製作陣の熱い想いが溢れるプロダクションノート、ディレクターズノートは必読。

劇場版 センキョナンデス
「選挙は祭だ!」と語る制作者たちの姿勢や想いがギッシリ詰まっている。

aftersun/アフターサン
父娘の思い出写真が挟まれているという仕様だけでもう泣ける。

怪物
最初と最後の二手に分かれた写真ページがポイント。前後半それぞれに分かれた写真のセレクトに意味を感じる。

ポトフ 美食家と料理人
「ポトフ」以外の料理のレシピもしっかり載っているところがすごい。レストランのメニューを模したデザインも素敵。

帰れない山
封筒に入ったポストカードのサプライズ。書かれたメッセージに再び涙。

オオカミの家
ポップなカラーリングだけど作品の不穏さをしっかり引き継いでいる。同封されている同時上映『骨』の紙一枚の解説文も凝ったデザインされていて嬉しかった。

ゴーストワールド
再上映作品だけどしっかりとしたパンフを作ってくれて嬉しかった。

物価、製造コスト高騰のなか、変わらずにパンフを作ってくださりありがとうございます。

◆ながせ(Podcast)

シャンタル・アケルマン映画祭2023
まるで文芸誌かのような読み応えあるテキストで、満足度が高かった!遅ればせながらシャンタル・アケルマンにどハマりしたこともあり、大切に読みました。

ゴーストワールド
大好きな映画の、まさかのリバイバル!パンフも作品愛に溢れまくっていて、全国にいた(であろう)イーニドとレベッカ的な誰かとそっと目配せしあうような(でも彼女らはそんなことはしなさそうでもある)、たまらないパンフでした。

aftersun/アフターサン
周囲で最も熱かった作品。初日に鑑賞し、とにかく普及に勤しみました笑 そんな中「パンフも素敵なんですよ〜」と一言添えると、気に留めてくれる人が増えました。普段パンフを買う習慣がない方をも魅了した、作品の余韻と大島依提亜さんによるデザインは2023年の印象深い思い出のひとつです。

ファースト・カウ
年末ギリギリに公開された、ケリー・ライカートの最高の作品。パンフのデザインは石井勇一さんで、表紙の雌牛とその目のところがドーナツのようにくり抜かれた、とにかくカッコいいパンフ。ちなみに『aftersun/アフターサン』でパンフを気にしてくれた知人が、「これも買ったよ〜』と報告してくれました。

苦い涙
私がやりました
表紙から覗く「カール」がたまらない! 大島依提亜さんが、同じ年に公開されたオゾンの作品をどちらも手掛け、いずれも黒とゴールドを基調にしたデザインだったのがカッコよかった!

TAR/ター
ケイト・ブランシェットがたまらなくカッコよく、鑑賞後にパンフを手に取ると「世界は、ケイト・ブランシェットで回っている!」(コラムのタイトル)と書かれていて、首がもげるほど頷きながら帰路につきました。

枯れ葉
犬(チャップリン)のカットが多くて大好きなパンフ。

ジェーンとシャルロット
もはや写真集なのですが...このふたりのドキュメンタリーはもうたまらず、パンフもわたしにとっては永久保存版です。

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい
ひと目でくまのぬいぐるみを感じさせる表紙がすごい!本編には茶色いくまのぬいぐるみはあまり出てこないのですが、逆にそれも面白いと思いました。

わたしの幸せな結婚
作品の世界観にぴったりな素敵な装丁が魅力的でした。目黒さん人気も手伝って、だと思うのですが、初日から売り切れていて入手するのがしばらく困難だったのも、記憶に残っています。

◆林田学秋(子連れ狼わくわく大図鑑、ギララ・ゴケミドロ・昆虫・髑髏船 オール特撮大図鑑:編集長)

グリッドマン ユニバース
映画を見る前と見た後で表紙の印象がまるで変わる。スタッフ陣の愛のあるコメントも見ていて気持ちいいし、「宇宙船」風の特写があるのも素敵。

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3
表紙がかっこよすぎる。顔が映っていないのにガーディアンズの魅力がだだ洩れ。もちろん中身もGOOD!

MEG ザ・モンスターズ2
サメの解説もあるが、「ジェイソン・ステイサムの最強職歴」なんて最高のコラムにきっちりページが割かれている。これ作ったヤツは最高だぜ。

◆パンフマン(映画パンフレットデータベース作成)

ミャンマー・ダイアリーズ
相変わらず凄い情報量。こういう繊細なお仕事は逆に大手のメディアには出来ない編集だと思う。

PLASTIC
アマプラ配信のドラマシリーズ『デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスがマジで最高だった頃』(23)にパンフがもしあったらこんな風に作ってほしい。

ディズニー創立100周年記念「シンデレラ」
家電量販店の札の如く「現品限り」と貼ってあったので思わず買ってしまったけど、凄まじい資料性の高さに大感動。自分があまりにもこの作品について知らなさすぎたのかもしれないけど、内容は同時発売の「ファンタジア」より濃厚。

ドミノ
公開前に70-80ページくらいと聞いていて、どんな形にするんだろうと考えていたら、あーその手があったかと。そんなに嫌いではない映画本編と同じくなんか騙された感じで。

ドキュメント サニーデイ・サービス
CD付きパンフの歴史に新たな伝説が誕生した。

BLUE GIANT
LPケースタイプのパンフが劇場に並んでいるのを見て、作品を知り、足を運ぶきっかけとなった。

逆転のトライアングル
作品と世界観の関係でいうと真っ先にこれが思い浮かんだ。

ゴーストワールド
公開当時に観ていた人がその時どんな気持ちだったのかを改めて言語化してくれていた。

YIDFF2023「野田真吉特集:モノと生の祝祭」特集パンフ
『農村住宅改善』があまりにも1940年に作られたと知って驚愕。これ「建築映画館2023」でも上映されていたんですよね。

WBLC2023 ワールド・ブルース・リー・クラシック2023
WBCとかけたダジャレ親父のセンスで今でも新しいブルース・リーグッズが作られるなんて!

◆屋代忠重(PATU Fan × Zine vol.02:編集長・裏切りのサーカスZine 編集長)

さらば、わが愛/覇王別姫 4K
劇場で完売続出なのも納得のクオリティ。塚本陽さんの素晴らしいデザインが冴え渡っている。

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
初回版の表紙にちょっとした遊び心が入っているのが嬉しい。観音開きページに掲載されてる全ユニバースのエヴリンとか気合が入りまくっていて凄い。

福田村事件
映画の衝撃的な内容を補完してくれる解説はもちろん、大ボリュームのテキストが充実しており、パンフの枠を飛び越えた一冊。

シチリアサマー
写真用紙のようなページやパラパラ漫画のようなギミックなど、デザイン全てが好きです。

別れる決心
パンフ本体のデザインもさることながら、パンフが茶封筒に入っている上に止めてるテープにもこだわりが感じられている。

aftersun/アフターサン
チタンやカモンカモン、パリ13区など大島さんのこれまでのデザインが凝縮されたような傑作パンフ。

PERFECT DAYS
もはやパンフというよりムック本と言っていいほどの濃密な内容に何度も膝を打つ。シネマシャンテ限定版のある仕掛けに一人ニヤニヤしています。

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー
本体の包紙を開封する手間が作品の手術を連想させてくれる上に、包紙の裏紙の肉っぽい色合いがクローネンバーグの世界観によくマッチしていて楽しい。

枯れ葉
今年最も紙へのこだわりが凄かったと感じられた一冊。採算が不安になるレベルで高いクオリティ!

郊外の鳥たち
インタビューや多くの寄稿など山盛りのテキストのおかげで、難解な内容を手厚くフォローしてるし、写真も満載でもう一度作品を観ているような気さえしてくる。

探偵マーロウ、TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー、アイスクリームフィーバー、怪物…今年も豊作でした。
今年になって増えた4Kリマスター、リバイバル上映にもパンフが作られるようになり、そのどれもクオリティ高いのが嬉しい傾向です。2023年も映画パンフに関われて楽しい一年でした。2024年はどんなパンフに出会えるか楽しみです。

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