2022年12月に公開された映画のパンフレットをPATUメンバーが紹介します!
『マッドゴッド』



鉄板と見紛う装丁の格好良さ!得も言われぬ世界観も常人には判別不能な書き込みのされたコンテを見れば納得するしかない。劇中ではただ恐ろしく悍ましく見えた地底世界の住人たちが命を吹き込まれていく過程に息を呑む。制作期間30年の執念とも言うべき軌跡が詰まった一冊。(小島)
発行日:2022年12月2日
発行・編集:ロングライド
デザイン:大島依提亜、中山隼人
印刷所:北斗社
定価:1,300円(税抜価格1,182円)
『ゴアイズムVol.02』



池袋・新文芸坐オールナイトで上映された「ゴアフェスVol. 2 ~ゴー・ビヨンド~」のためだけに制作された珍しいパンフレット。当日上映された4作と「合わせて観たい」関連作紹介、主催者一押しのオラフ・イッテンバッハ監督全作品レビューに加え最先端ゴアの紹介まで。このボリュームを2日で作り上げた力業に脱帽。(小島)
発行日:2022年12月10日
発行者:VIDEO VIOLENCE RELEASING
文章・編集・発行:ヒロシニコフ
印刷所:ポプルス
『ピエール・エテックス レトロスペクティブ』



今回の特集上映に併せ制作されたパンフレットは写真と文章のバランスが良く、まるでスクラップブックをめくるような楽しさがある誌面デザイン。エテックスの師匠であるジャック・タチとの出会い、長年映画監督と脚本家という共犯関係を築き上げてきたジャン=クロード・カリエールとの軌跡などが分かりやすくまとめられています。執筆陣はカリエールによる小説版「ぼくの伯父さん」の翻訳をした小柳帝さんやクラシック喜劇研究家のいいをじゅんこさんなど。パンフレットのページをパラパラ漫画のようにめくると、エテックスが動く粋な演出に思わずニヤリ。(しかまる。)
発行日:2022年12月24日
編集・発行:株式会社 ザジフィルムズ
編集協力:小柳帝
デザイン:山田裕紀子
定価:1000円(税込)
『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』


正面から見ると1冊の分厚い書物のように見える(実は裏表紙が少し大きくなり、本の側面のイラストが描かれている仕掛け)だまし絵のようなビジュアルが印象的。中はとにかくネコ!ネコ!!ネコ!!!テキストのページはあえて古い本のようにダメージが演出されており、細部までこだわりが感じられて嬉しい。(ながせ)
発行日:2022年12月1日
発行者:太田圭二
発行所:東宝株式会社映像事業部
発行権者:株式会社キノフィルムズ
編集:株式会社東宝ステラ
デザイン:大島依提亜、中山隼人
印刷所:株式会社久栄社
定価:990円(税抜本体価格900円)
『MEN 同じ顔の男たち』


正方形のコンパクトな版型。表紙はモノトーンで統一され、市松模様の凹凸の感触が面白い紙が使われている。テキストページは黒の紙に白い文字で統一され、本作の不穏な雰囲気が映画を観終わったあとも続いているような気分になる。(鈴木)
発行日:2022年12月9日
編集・発行:ハピネットファントム・スタジオ
デザイン:大島依提亜
印刷:久栄社
編集協力:スキップ、中谷祐介
定価:900円(税込)
『ケイコ 目を澄ませて』


ケイコの練習ノートを模したデザイン。監督キャストインタビューなどポイントを押さえつつ、越智大輔氏のコラムは聴覚障害者がプロボクサーになる難しさがよく分かり必読。(屋代)
発行日:2023年12月16日
編集:株式会社ハピネットファント・ムスタジオ
デザイン:船山聡志(ヘルベチカ)
印刷所:三映印刷株式会社
編集協力:山元明子(ヘルベチカ)
価格:850円(税込)
『そばかす』


表紙は主人公、蘇畑佳純(そばた・かすみ)を演じる三浦透子が浜辺で寝転がる写真。
地に足のついた日常とその中に潜む疑問、見え隠れする言い出せない感情を丁寧に掬い取ったような映画そのものと呼応するようなシンプルなパンフに”らしさ”を感じる。脚本を担当したアサダアツシ氏のインタビューで明かされる、劇中、会話に何度も登場するあの映画と主人公の関係性を面白く読んだ。(ながせ)
発行日:2022年12月16日
発行:「そばかす」製作委員会
編集:マジックアワー
デザイン:谷田部准司(トルトゥガ・グラフィック)
編集協力:FINOR
定価:800円(税込)
『チーム・ジンバブエのソムリエたち』


国旗カラーでもある緑と黄色を配したビビッドなデザイン。ワインソムリエ、国立民俗博物館の研究員、ジンバブエ生まれの美術家などによるコラムは、難民からトップソムリエになった4人のアフリカ人の「旅」を追う本作の援護射撃とも言うべき内容で、作品の余韻に深みを与える。(小島)
テキスト協力:落合有紀
デザイン:大寿美トモエ
編集・発行:アルバトロス・フィルム
定価:900円(税込)
『真・事故物件パート2/全滅』


前作の予想以上のヒットから1年もしないうちの続編。予算倍増、パンフもさらに充実の内容。氏家譲寿(ナマニク)氏の開き直りの美学に触れたコラム、ヒロシニコフ氏のレビューは作品に負けず劣らずの熱量をほこっている。(屋代)
発行日:2022年
編集:星野和子
デザイン:廣木淳
価格:1000円(税込)
『戦慄のリンク』


閉鎖的政策で『リング』すら劇場公開されていない中国で、しかし人気の高いJホラーを撮影してほしいという依頼を受けた鶴田監督が撮影の進行を記した「製作日記」は必読。中国当局とのやり取り、規制と自己の表現したいことの折り合いをどうつけていったかの苦悩がにじみ、それが作品にどのように反映されているかが分かると本編がさらに面白く観られる。(小島)
発行日:2023年12月23日
発行:フリーマン・オフィス
編集:筒井修(フリーマン・オフィス)
デザイン:伊藤正治
定価:600円(税込)
『猫たちのアパートメント』


表紙を開くといきなり奥付があらわれるトリッキーな構成。素晴らしい内容のテキスト中心が並ぶ中でも、平田俊子氏のコラムは猫の幸せとはなんなのかと考えさせられる。(屋代)
発行日:2023年12月23日
編集:パンドラ
価格:800円(税込)
翻訳協力:三重野聖愛
レイアウト:日用
『柳川』


4本のコラムに加え、8ページにわたるチャン・リュル監督のロングインタビューは読み応え抜群。作品のイメージカラーでもある黒地に緑字は多少読みづらいが、それを差し引いても素晴らしい。(屋代)
発行日:2023年12月16日
デザイン:あきやまなおこ
価格:900円(税込)
『あのこと』

作品の背景をより知りたくなる作品なので、それに応えるようにテキストが充実しているパンフレットで満足度が高い。監督(脚本も兼任)と原作者の想い、作品で描かれる時代のフランスについてのテキストや映画評論家の常川拓也氏、ライター・編集者の小柳帝氏のコラムに加え、小説家・柚木麻子氏のエッセイが読み応えあり。(ながせ)
発行日:2022年12月2日
発行承認:ギャガ株式会社
編集・発行:松竹株式会社 事業推進部
編集:宮部さくや(松竹)
デザイン:黒田秀樹(アイ・プランニング)
定価:850円(税抜価格 773円)
『殺しを呼ぶ卵【最長版】』

アヴァンギャルドな本作の雰囲気を余すことなく表現したパンフレットデザインは塚本陽さんによるもの。ページ数は少ないものの、セルジオ石熊さんによる「ジュールとキム チネマを撃ったパルチザンたち」のページは読み応え抜群です。(しかまる。)
発行日:2022年12月2日
編集:池田祐里枝、岡村尚人
発行:アンプラグド
デザイン:塚本陽
協力:セルジオ石熊
定価:700円(税込)
『月の満ち欠け』

シンプルなネイビーに浮かび上がる満月が綺麗な表紙が目をひく。表紙だけでなく、全ページの紙がしっかりしているので、手に取るとずしりと重めなのも嬉しい。内容は監督や出演者のインタビュー、舞台となる高田馬場の解説や決定稿など、目新しいというわけではないが堅実で作品の魅力をしっかりと丁寧に伝えている印象。テキストも写真も充実しており、バランスが良い。(ながせ)
発行日:2022年12月2日
編集・発行:松竹株式会社 事業推進部
編集:岩田康平(松竹)
テキスト協力:遠藤薫
デザイン:印南貴行、粕谷望美(MARUC)
印刷:日商印刷株式会社
定価:1,000円(税抜価格910円)
『THE FIRST SLAM DUNK』

井上雄彦監督、キャスト、スタッフ、主題歌を担当したThe Birthdayと10-FEETのインタビューが掲載。記事によるとインタビュイーのほとんどがスラムダンクを通ってきているとのことで、原作の影響の大きさを改めて感じる。(鈴木)
発行日:2022年12月3日
編集長:小林美姫
編集・執筆:石井 淳、山根 彩
デザイン:増田詔子
表紙AD:榎本卓朗
印刷:三映印刷
発行所:東映アニメーション株式会社 営業推進部
定価:1,000円(税込)
『夜、鳥たちが啼く』

監督インタビューのほか映画監督の首藤凛による監督評が語られていて面白い。撮影稿も全文あり。600ページにものぼる『狂伝 佐藤泰志-無垢と修羅』を書き上げた中澤雄大も原作者評としてレビューを寄せていて、佐藤泰志の小説がこれで6作も映画化されている理由がわかるかもしれない。(パ)
発行日:2022年12月9日
発行承認:クロックワークス
編集・発行:松竹株式会社事業推進部
編集:岩田康平(松竹)
テキスト協力:相田冬二
デザイン:大寿美デザイン
印刷:成旺印刷株式会社
定価:1000円(税込)
『ラーゲリより愛を込めて』

主な出演者らのインタビュー、モデルとなった山本幡男、史実と劇中の出来事が並ぶ年表も作品の理解を深めてくれます。観ていて辛い事件が続くなか、癒しとなる存在・犬のクロの写真が載っている!何よりある文章の全文が掲載されていて、涙なくして読めません。(パ)
発行日:2022年12月9日
編集:株式会社東宝ステラ
印刷所:株式会社久栄社
デザイン:宮本尚男
定価:880円(税込)
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』

パンフレットに相当するものではあるが、正確にはパンフではなく、ヴィジュアル・ディクショナリーとあるように設定資料集と呼んだ方が正しいのかも。生物やメカなどを網羅した図鑑の趣きで、監督や出演者のインタビューはない。賛否あるけど、これはこれでありかなと思いました。(パ)
発行日:2022年12月16日
編集:株式会社東宝ステラ
印刷所:成旺印刷株式会社
デザイン:有限会社ダイアローグ
定価:1650円(税込)
『トゥモロー・モーニング』

ロンドンで誕生したミュージカルを映画化した作品というだけあり、映画・演劇ジャーナリストの若林ゆりさんによるコラム、出演者インタビューなどがてんこ盛りな一冊。豪華ミュージカル俳優の競演!という凄さがいまいちピンとこない私のようなミュージカル初心者にも優しく、彼らの来歴、舞台版と映画版の違いなどが丁寧に解説された親切な作りとなっています。また、このミュージカルの日本公演で出演された田代万里生さんのインタビューも掲載。映画からこの作品を知った人も、元々ミュージカルが好きだった人も取りこぼさない姿勢が素晴らしい。(しかまる。)
発行日:2022年10月吉日
編集・発行:セテラ・インターナショナル
テキスト協力:若林ゆり、和田由紀子
通訳協力:溝渕俊介
翻訳協力:林加奈(タムト)
デザイン:大寿美トモエ
定価:800円(税込)
『銀幕002 飛翔するジャン・コクトーへの挨拶』

2022年9月に「わたしたちとベネックス わたしたちの『ディーバ』」を第1号として発刊したZINE「銀幕」が早くも第2号を発売。今回は没後60年の映画祭に合わせて「ジャン・コクトー」を特集。三島、澁澤、寺山らの過去と現在の書き手が交錯し、新たな肖像を浮かび上がらせる。クールで熱い文章の編集後記も読んでほしい。(パ)
発行日:2022年12月30日
編集:寺岡裕司
デザイン:戸塚泰雄
協力:小瀧萌香
定価:800円(税込)
<過去の記事で紹介できなかった2022年11月公開作品のパンフ>
『極道系Vチューバー達磨』



PATUのメンバーで製作した達磨型見開きパンフ!監督の希望で中身は全出演者をコメント付きで紹介する、さながら食べ応え満点の達磨弁当。映画を観た人には分かる「汚れ」的デザイン、松本監督作品恒例の「寄せ書き」スペース、主演俳優の海道力也さんの会員制バーに入れる入店券にもなっており、見開きの限界に挑戦したパンフ。(小島)
発行日:2022年11月28日
発行:合同会社CROCO
デザイン:原真一朗
イラスト:學
編集協力:小島ともみ
『土を喰らう十二ヵ月』


作家・水上勉の料理エッセイを原案とした本作。主人公ツトムが作る十二ヵ月の精進料理の紹介や、初めて映画料理に挑んだという料理研究家・土井善晴さんのインタビューが見開きで掲載されており、劇中料理について詳しく知りたい方はぜひパンフを読んでいただきたい。(machi)
2022年11月11日発行
発行承認:日活株式会社
編集・発行:松竹株式会社 事業推進部
編集:宮部さくや(松竹)
テキスト協力:矢崎由紀子、村尾泰郎、須永貴子
デザイン:大寿美トモエ
印刷:成旺印刷株式会社
価格:900円(税込)