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【TIFF2日目レポート3】痛快な人間ドラマ! 『首』

文=浦田行進曲

『アウトレイジ 最終章』以来6年振りの北野武監督最新作、映画『首』が11月23日ついに公開される。予告編を繰り返し見ては「皆殺しに決まっとるがやー!」「あの人の元におったらいくつ首があっても足らしまへんけどなぁ」などと不穏なセリフを暗記し、日々発話してしまっていた人は私以外にもいるだろうか。

戦国時代、織田信長の跡目争いを軸に、欲望と思惑が絡み合う人間ドラマをユーモラスに描く本作。豪華な役者陣が演じる強烈なキャラクターたちがなんと言っても魅力的だ。

特に加瀬亮演じる織田信長は、終始尾張弁で暴言をまくし立て、とんでもなく傍若無人な振る舞いをし続ける。やり過ぎなくらいエキセントリックな人物造形でありながら演者の力も相まって出落ちに終わらず、ずっと可笑しい。本当に嫌な奴だが妙に可愛げもあり、スクリーン越しに見ているはずが家臣さながらに愛憎を抱いてしまう。

ビートたけし演じる羽柴秀吉とその弟羽柴秀長(大森南朋)、黒田官兵衛(浅野忠信)、こちらの3人のやり取りも見所のひとつ。明らかに殿のアドリブであろう即興コントに対応する秀長の腰巾着感とタジタジな様子の軍師官兵衛の表情は、役どころとのハマり方が完璧で最高のシーンだ。

秀吉に仕える元忍者の芸人・曽呂利新左衛門の存在ほか、全員が全員語りたくなってしまうようなキャラクターなのだがそれらは是非実際に映画を観て楽しんでほしい。
物語上、登場人物たちにおける表向きの関係性を相関図に起こすのは容易だ。しかしながらその裏では忠誠・愛情・裏切りなどが常に渦巻き続けている。尊敬する人物にも馬鹿な部分があるように、また許されない行為に対して時に親しみを持ってしまうように、人間そのものに対するおかしみが愛おしく感じられるのが面白い。もちろん「狂ってやがる。」というキャッチコピーには納得のエロありグロありの濃厚な作品には違いないのだが。

構想30年、北野武監督の集大成と言われる本作がエンタメ色の強い映画であることがビートたけしのファンとしても嬉しかった。文字通り威勢よく飛んでいく首と痛快な人間ドラマに熱狂しよう。

36TIFF 2023/10/25

作品情報

監督 北野 武
キャスト ビートたけし / 西島秀俊 / 加瀬 亮
作品公式サイト
131分
日本語
英語字幕
2020年
日本
東宝/KADOKAWA

妄想パンフ

公開が決まっている作品なのでこちらのコーナーはなし。どんなパンフが制作されるのか今から待ち遠しい。

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