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【TIFF6日目レポート2】戦隊ヒーロー作品の新しい形『タバコは咳の原因になる』

文=鈴木隆子 妄想パンフイラスト=映女

今年の映画祭のラインナップの中に、突如として現れた戦隊ヒーローのビジュアル。今回の屋外上映では『忍風戦隊ハリケンジャー』や『爆竜戦隊アバレンジャー』が上映されているのだが、それらと見間違っている訳ではなかった。今年は自国の深刻な社会問題や紛争、戦争や、家父長制と男尊女卑、性の多様性などをテーマにした重厚な作品が多い中、そこに「タバコ戦隊」の写真を見つけた時はしばらく静止してしまったのだが、自分が幼いころに触れてきたいわゆる戦隊モノとは微妙に趣が異なる彼らに妙に惹かれ、早速観に行くことに決めた。

フランスの映画ファンの間では知らない者はいないと言われ、DJミスター・オワゾ(Mr. Oizo)という名義でミュージシャンとしても活躍している、カンタン・デュピュー監督の最新作『タバコは咳の原因になる』。今まで彼が撮ってきた作品は、『アーティスト』(2011)でアカデミー賞主演男優賞を受賞したジャン・デュジャルダンなどの同国の一流俳優を迎え、フランス映画のイメージを覆す誰も思いつかないような奇抜かつ斬新な作風で他のフランス映画と一線を画し、いずれも「異色作」「怪作」などと評されている。そのため「フランスのスパイク・ジョーンズ」と呼ばれているとかいないとか。日本では劇場未公開作品も多いのだが、今年の9/3に『地下室のヘンな穴』(2022)で本格的な日本公開が叶い、これから日本でのファン獲得が期待される。

侵略者から地球を救うため、怪獣と日夜奮闘する「タバコ戦隊」。亀怪人を倒したあと彼らは、結束を深めるための合宿生活をボスから提案され、林間学校もしくは修学旅行のような雰囲気で合宿をスタートさせる。とはいえ戦いに備えたトレーニングなどは計画されていないようで、合宿開始早々彼らは時間を持て余し始めていたが、夜にはお楽しみが待っていた。合宿の夜といえば「怖い話」だ。日本だけかと思っていたがフランスも同じようで、早速焚き火を囲んでの怖い話大会が始まる。

5人の男女から成る「タバコ戦隊」は、20歳前後と思われる若者から50歳近いメンバーもおり年齢層の幅が広く、家庭をもつ者も在籍していて、ヒーロー業界でのダイバーシティの広がりを感じさせる。地球を守るため、ならず者と戦うというミッションを負っている点は「戦隊ヒーロー作品」と共通するところだが、それだけでは終わらない展開が観るものを待ち受けるのだ。誰も予想できない顛末に、これがカンタン・デュピューの魅力なのかと恐れ入った。なんという多幸感と脱力感。この驚きと喜びには作品を観て出会ってほしいので、これ以上の内容はここに記載できない。近いうちに再び日本にこの作品が戻って来てくれることを願う。

35thTIFF 2022/10/30

作品情報

『タバコは咳の原因になる』
原題:Fumer fait tousser
監督:カンタン・デュピュー
キャスト:ジル・ルルーシュ、ヴァンサン・ラコスト、ウーヤラ・アマムラ
77分/カラー/フランス語/英語・日本語字幕/2022年/フランス
予告編はこちら

妄想パンフ

判型は、主役である「タバコ戦隊」のヘルメットを型どった特殊仕様。キッズたちの注目度UPを狙う。
大きさは実物(人の顔ぐらい)と同じぐらいにし、両目と両耳のあたりに穴を開け、耳の穴に紐を通してお面としても使えるようにする。(紐は付属)
子どもに媚びているデザインと思われる人もいるかもしれないが気にしないでほしい。
内容は、誰もが引き込まれた「怖い話」のリスト&あらすじを載せ、鑑賞後に振り返っていただきたい。

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