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【TIFF8日目レポート3】少女たちの過ごした夏『リベルタード』

文=浦田行進曲 妄想パンフイラスト=映女

15歳の少女ノラは、母に連れられいとこたちと祖母の家で夏休みを過ごすことになる。祖母はアルツハイマーを患っていた。同居している使用人の女性以外のことは、自分の娘であろうと度々認識できなくなってしまう。「私はボケても使用人より娘を忘れたりはしない」と泣きながら母はノラに伝える。
使用人にはノラと同い年の娘がいた。「自由」という意味の名前を持つリベルタードは、髪を黒と青のツートンカラーに染め、ファッションや振る舞いも垢抜けた少女だった。裕福な家のお嬢さんとして育ってきたノラは、自分よりも数段大人びたリベルタードに憧れを持って近づく。彼女の真似をしてバイクに乗る時、タバコを吸う時、背伸びして初めてではないと嘘をつく。クラブで見たリベルタードの姿を自分の体験のように置き換えて友人に話す。ノラの取る行動は少なからず私たちも身に覚えがあることだろう。

一方で使用人の娘とその雇い主の娘、という立場の差から、家族から見れば互いの関係性は逆転していた。陽の光のもと賑やかに準備された食事を取るノラたちと、質素な食事を親子ふたりで静かに行うリベルタード。さらに母親からは、素行の悪いリベルタードとの付き合いを止めるよう注意されてしまう。
それぞれ自分の家族について悩みを抱え、思春期ゆえのもどかしさの中、友情を深めていくふたり。キラキラした夏の短い期間はいつも終わりを予感させて切ない。アプローチは全く異なるが『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』のラストカットにも通じる、私たちにも存在していた「その夏」を呼び起こす1作だった。

妄想パンフ

ノラとリベルタードを象徴する水着を表紙に、LIBERTADのタイトルを。中身にはキャスト紹介の他、今夏翻訳版が出版されたグラフィック・ノベル『THIS ONE SUMMER』他、『ゴーストワールド』『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』など少女たちの友情を描いた作品の特集を載せたい。

作品情報

『リベルタード』(原題:Libertad)
予告編はこちらから
監督:クララ・ロケ
キャスト:マリア・モレラ、ニコール・ガルシア、ヴィッキー・ペーニャ
109分/カラー/スペイン語/日本語・英語字幕/2021年/スペイン/ベルギー

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