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【PATU REVIEW】立場で分断されたものたちの架け橋「あのこは貴族」

文=喜田なつみ

「あのこは貴族」を知ったのは、予告だった。

Instagramで流れてきた広告を再生すると、「結婚すれば幸せになれる。」と考える、東京生まれの箱入り娘、 榛原華子 と、「この街を出れば自由になれる」と田舎から、東京に出てきた、上京組の 時岡美紀 が、現れ、欲しいものをしっかり手に入れた、様子の2人なのだが、

画面が切り替わり、雨の音とともに

「———でも、息苦しい。」の大きな文字が浮かぶ。

それをみたとき、一つの感情がフラッシュバックした。

その感情を取り出すために、映画を観てから思い出したことを書く。
映画の内容でもあるが、
友達から、「両親と美術館へ行った。」と言う話を聞いたときに、
庶民に属する私は、「行ったことないよ!すごいね!」と話をしていた。

私にとって美術館は、遠足でしか行ったことがない場所だったから、凄く不思議なことだった。
しかし、彼女たちからしたら、あまり稀なことではない様子なのだ。

このことで、自分との違いをしっかり感じ取っていた。
これが「階級」だったのかと知る。

これ以上はあまり、公にして言葉にしてはいけない気がするものだったが、
潜めて隠し持つ感情としては、心地の良いものではなかった。
庶民が、家族で、美術館へ行かないかどうかは一人一人に聞いたことがないので、はっきりはわからないし、
富を生まれながらにして持っている人や、
そのことで得た経験への劣等感がなかったといえば嘘になる。

しかし、この感情を投げかけたところで、
相手はあまり自分が得していることには気づいていないようなのだ。
環境というのはその人にとっての、当たり前なのだと知る。
そうなると、閉ざすしかない扉の中に、どこにも行き場のない感情がふんわりと残ってしまっていた。

「あのこは貴族」を映画館で観たとき、
『これって、私一人が持っていた感情じゃなかったんだ……!』
と、はっきりと映像や言葉で、心が象られた。
そして、何かが満たされて、ふっと、風が舞い忽然と姿を消したかのようだった。

自然と生まれてから、勝手に「分かり合えないよ。」と立場によって、分断されている気がする。
例えば、男、女、階層、年齢、独身、結婚、仕事….計り知れないほどあるのだ。

それぞれ悩みの色や形は違うので、とってもみづらいが、
しっかり強い眼ざしで見つめて、

そこに、壁ではなく、橋を架けたら、その先には、美紀が映画の中で言った、あたたかな言葉に、きっと出会えるだろう。

作品情報

『あのこは貴族』
原題:山内マリコ「あのこは貴族」(​集英社文庫刊)
監督・脚本:岨手由貴子
出演:門脇麦、水原希子、高良健吾、石橋静河、山下リオほか
配給:東京テアトル/バンダイナムコアーツ
製作国:日本/製作年:2020年
※2021年2月26日より全国にて公開
公式サイト

期間限定先行レンタル配信
配信期間 2021年5月26日(水) 0:00~2021年8月31日(火)23:59
販売価格:HD/SD共通 1,100円(税込)
視聴時間:72時間
対象配信サービスは、こちらよりご確認ください。

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