No44【TIFF9日目レポート2】Two drifters, off to see the world『足を探して』

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文=やしろ 妄想パンフイラスト=映女

ムーンリバーが流れるダンスホール。息の合ったダンスを魅せるチエンとズーチン。天に頭をつけ、地に足を這わし、同じ根元の虹色の照明を浴びながら回り続ける2人は多幸感に包まれていました。しかし、この映画の始まりは残念ながら、ズーチンが敗血症で脚を切断し、手術の甲斐なく亡くなってしまうところから始まります。本当に失ったものは何なのか気付く事なく。

片足の無いズーチンの遺体は搬送車に乗せられ、チエンが寄り添い火葬場を目指します。車内に流れる「美しき青きドナウ」を聴いてるうちに、チエンにムーンリバーを踊った日々が甦ります(どちらも川がタイトルのワルツ)。チエンにある想いがよぎり、失われた片足を取り戻す為に病院へと引き返すのです。

一方、ズーチンのモノローグと共に2人の結婚生活が挟まれます。始まりは彼の一目惚れでした。ムーンリバーを踊る2人は惹かれあい、お互いにダンサーとして名を馳せていきます。しかし、ある事件をきっかけに彼はダンスを諦め、2人の結婚生活は徐々にすれ違って行くのです。

このチエンとズーチンの2人の視点を交互に描いて物語は進行し、この夫婦の根底に有った愛とはなんだったのか?なぜチエンはズーチンの足を取り戻すことに躍起になるのか?なぜ死んだズーチンのモノローグが入るのか?を徐々に解き明かしていきます。この構成は見事で、小説家としても活動しているチャン・ヤオシェン監督の脚本が冴えわたります。時折挟まれるブラックユーモアは、すれ違う2人の悲哀の緩衝材としてアクセントを加えることに成功しています。

ハッキリ言ってズーチンは甲斐性なしのダメ男で、良かれと思ってなすこと全て裏目に出ますし、逆にチエンはその才覚をもって成功を収めていきます。ここは演じるグイ・ルンメイとトニー・ヤンの 好演が光ります。特にルンメイは巻き込んだ人をなし崩しに味方につけるチエンの魅力をとても上手く引き出しています。そんなとっくに別れてもおかしくない夫婦を、結局は死が分かつ事になりますが、その時になって初めてズーチンは本当に失ったものに気付くのです。お互いに大きな喪失感を抱え、やがて2人は同じ願いへと至ります。そして自身の物語の中で失敗と後悔を繰り返し、この奇妙に捻じれたすれ違いの愛情は、やがて糸となり失ってしまったものたちを縫い合わせるのです。

「出来れば夢でもう一度…」
I’m crossing you in style some day…

妄想パンフ

A4横 ダンスシーンでズーチンが写っていない状態を表紙に、チエンが写ってない方を裏表紙に。中身で2人揃って踊っている。

作品情報

『足を探して』(原題:A Leg[腿])
予告編はこちらから
監督:チャン・ヤオシェン[張耀升] キャスト:グイ・ルンメイ/トニー・ヤン
115分/カラー/北京語・台湾語/日本語・英語・中国語字幕/2020年/台湾 長編1作目の監督作

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