No38 【TIFF6日目レポート3】自分らしく生きるための闘い『リトル・ガール』

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文=浦田行進曲 妄想パンフイラスト=映女

少女が鏡を見ながら、ヘアアクセサリーを選ぶ。これがいいかも、とかわいい自分の姿を確認して、満足げな表情を浮かべる天使のようにかわいいサシャ。
彼女は解剖学的には男の子として生まれたが、自身の感覚とは一致していない。本作は主にサシャの母カリーヌによって語られる、性別違和の少女とその家族がありのままで生きるための闘いについて追ったフランスのドキュメンタリーだ。

社会はサシャを女の子として受け入れてはいなかった。専門的なケアが必要だと訴えるが、理解のない教師は家族の話を聞くことすらしない。誰かを傷つけるわけでもないのに自分らしくあることは許されず、男性扱いされ理不尽な生き方を強いられていた。医師の診断書があれば考えても良いという校長のひと言に一縷の望みをかけ、母娘はパリにいる小児精神科医の元へ向かう。

3歳になるまでにはもう既に、自分が女の子であることを知っていたサシャ。そのため母は、妊娠中に女の子が欲しいと考えていたことや、4人の子どものうちサシャにだけ男女共用の名前をつけたことが影響したのではないかと罪悪感にさいなまれていた。父はというと、サシャはサシャだ、と怒りを持って学校側の対応に憎しみを募らせる。まだ子どもである姉兄それぞれが自分の言葉で彼女との向き合い方を語る場面は胸に迫るものがあり、実際に映画を観て確認していただきたい。

医師は母に非がないこと、家族の対応は間違っておらず子どもの望み通りに受け入れることが正しいと伝える。自分のことを教えて、と聞かれたサシャの、母を傷つけぬよう言葉を選んで話し出すが学校のことを思い出して、まるい瞳に涙を溜める姿にはこちらも涙してしまう。サシャの幼少期を大人が奪うことは許されない。

サシャはみんなの意識を変えることを果たすべき使命として持って生まれてきたのだ、と母は話す。途中、バレエ教室にて「人は気にせず自由に踊って」と言われながらも他の女の子と違う服を着させられぎこちなく踊る場面があるが、その対比のように、映画のラストは大好きなチョウの羽飾りをつけて優雅に舞うサシャの姿で終わる。その伸びやかさと美しさといったら、彼女の身体が彼女以外の誰のものでもないことを観る者にはっきりと教えてくれるのだ。

妄想パンフ

おもちゃやチョウチョ、サシャが好きなもののイメージが散りばめられていて彼女のまっすぐな笑顔が思い浮かぶパンフ。
自分らしい格好で登校することがやっと認められた日の、ひとつ結びにした髪が印象的だったため、ポニーの絵を入れたい。

作品情報

『リトル・ガール』(Little Girl [Petite Fille] )
予告編はこちらから
監督:セバスチャン・リフシッツ
キャスト:サシャ
85分/カラー/フランス語/日本語・英語字幕/2020年/フランス

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